岡部騎手が現役引退へ

岡部幸雄騎手(56)の現役引退が9日、濃厚となった。10日に記者会見し発表する見込み。
http://www.nikkansports.com/ns/horseracing/f-hr-tp0-050309-0011.html

何年か前には「日曜最終レースの岡部は人気でも外し。その時間にはもう追う力も残ってないから。」などと言っていた人がいたけど、とうとう来るべきときが来たのかなぁって感じです。私にとっては最後の昭和のジョッキーで、同世代の柴田政人武邦彦そして福永洋一らと築いた時代を守ってきた最後の番人・職人・名人といった印象です。彼は調教師になることを目標とせず、早くから海外へ目を向けた日本最初の国際派ジョッキーでした。馬に対する評価も大体が「まあまあだね」「まだまだだね」が多く、本当に表情の変わらないインタビューがあり、そのくせマテリアル号の復活レースでは派手なガッツポーズを出したりもした。(そのマテリアルがゴール直後に故障・予後不良になったことで、彼は以降、ガッツポーズをとらなくなったのだが・・・)
彼はシンボリルドルフに競馬の何たるかを教え、そして巨大な重圧と戦う方法を教えてもらったはずだ。また、彼は名手と言われ続けた。それは奇抜な騎乗法をとらないスタイルと、理路整然とした騎乗理論によるものだが、どれだけ勝っても「天才」とは呼ばれなかった。

何故なのか。

それは彼にとっての「天才」とは福永洋一であり、それ以外の者でないことを昭和のファンが知っていたからだ。15期生の華は福永にあった。彼が現役である限り「名手」は「天才」になることはなく、「天才」が不運にもターフを去ったのちもそれは変わらなかった。

1987年に福永の年間最多勝記録を岡部が抜いたとき彼は何を思ったか。「天才」に並んだと思ったか。それともまだ彼の前には「天才」の背中があったのだろうか。

今、彼はステッキを置こうとしている。彼は追い続けた背中に並んだのだろうか、追い抜いたのだろうか。それとも、いまだに・・・。

現役であることにこだわり、それを貫いた名手が築いたものは大きく、大きな輝きがある。彼自身にとってはもっと大きな恒星があるのかもしれない。いまやその恒星は目に入らないのかもしれない。ただ私は岡部幸雄という恒星に魅せられた一人であり、今までも、そしてこれからも「名手」といわれれば彼の名前を思い出すのであろう。